型枠設計の全体像
型枠設計とは、「まだ固まっていないコンクリートの圧力に、型枠が耐えられるか?」を確認する作業です。
コンクリートを打設すると、液体のように型枠を内側から押します。この力に対して、型枠の各部材が壊れたり、変形しすぎたりしないかを順番にチェックします。
側圧を求める
→
せき板
→
端太材
→
セパレーター
考え方はシンプルです。「力」を求めて、各部材が「その力に耐えられるか」を内側から外側に向かって順番に検討していきます。
ポイント: 型枠は仮設構造物なので永久に持つ必要はありません。コンクリートが固まるまでの短い間だけ耐えればOKです。そのため、許容応力度も本設構造物より大きな値を使えます。
Step 1: 側圧計算 — コンクリートが型枠を押す力
そもそも側圧とは?
打設直後のコンクリートはまだ液体に近い状態です。水を容器に入れると底ほど圧力が大きくなるのと同じで、コンクリートも下に行くほど型枠を強く押します。この横方向の力が「側圧」です。
液圧と実際の側圧の違い
もしコンクリートが完全な液体なら、側圧は単純に「単位重量 × 高さ」で求まります。
液圧 = Wc × H
例: 24.0 kN/m³ × 3.0 m = 72.0 kN/m²
しかし実際は、コンクリートは打設後すぐに固まり始めます。下の方から固まるので、液圧より小さくなることが多いです。
「どれくらい小さくなるか」は、打設速度と温度に左右されます。
- 打設速度が速い → 固まる前にどんどん積まれる → 側圧は大きい
- 温度が高い → 早く固まる → 側圧は小さい
土木学会式
これを式にしたのが土木学会式です。
P = (Wc/3) × {1 + 100R/(T+20)} …柱、または打設速度R<2の場合
P = (Wc/3) × {1 + (150+30R)/(T+20)} …壁で打設速度R≧2の場合
Wc: 単位容積重量 (kN/m³)
R : 打設速度 (m/h)
T : コンクリート温度 (°C)
最終的な設計側圧は、この算定値・液圧・上限値の3つのうち最小値を採用します。
設計側圧 = min(算定式の値, 液圧, 上限値)
上限値: 柱 = 150 kN/m², 壁 = 100 kN/m²
なぜ最小値?: 算定式が液圧より大きくなることは物理的にありえません。また、上限値は「これ以上の側圧は実務上考えなくてよい」という安全側の上限です。
セパレーター間隔の算出
側圧がわかったら、セパレーター1本が負担する面積からセパの間隔を求めます。
正方形配置の場合: 間隔 = √(Ta / P)
Ta: セパの許容引張荷重 (kN)
P : 設計側圧 (kN/m²)
例: Ta=20.6kN, P=50kN/m² → √(20.6/50) = 0.642m → 600mm(50mm切下げ)
Step 1(スラブ): 鉛直荷重 — 上から下への力
スラブ(床版)の型枠は、柱や壁と違って横からの力(側圧)ではなく、上からの重さ(鉛直荷重)に耐える必要があります。
設計荷重 W = コンクリート自重 + 作業荷重
コンクリート自重 = Wc × t(スラブ厚)
作業荷重 = 1.5 kN/m²(作業員・機材の重さ)
例: 24.0 × 0.15 + 1.5 = 3.6 + 1.5 = 5.1 kN/m²
検討の流れは柱・壁と同じですが、部材の名前が変わります。
Step 2: せき板の検討 — 直接コンクリートに触れる板
せき板(コンパネ等)はコンクリートに直接触れる部材です。端太材(または根太)の間隔をスパンとする単純梁として検討します。
2つのチェック項目
| チェック項目 | 何を確認? | 判定基準 |
| 曲げ応力度 | 板が折れないか | σ ≦ fb(許容曲げ応力度) |
| たわみ | 板がたわみすぎないか | δ ≦ L/300 |
計算の考え方
せき板の幅1mmあたりで考えます(単位幅法)。こうすると板の幅に関係なく計算できます。
【曲げ】
荷重 w = P × 0.001 (N/mm per mm幅)
モーメント M = wL²/8
断面係数 Z = t²/6
応力度 σ = M/Z ≦ fb
【たわみ】
断面二次モーメント I = t³/12
たわみ δ = 5wL⁴/(384EI) ≦ L/300
L/300とは?: たわみの許容値です。スパン300mmの板なら1mmまでたわんでOKという意味。これを超えるとコンクリートの仕上がり面に影響が出ます。
最大許容スパン
逆算すると「この板で何mmまでの端太材間隔が使えるか」がわかります。曲げとたわみの両方から算出し、小さい方が最大スパンになります。
Step 3: 端太材の検討 — せき板を支える骨組み
端太材はせき板の裏側で支える部材です。セパレーター間隔をスパンとする単純梁として検討します。
せき板と同じく「曲げ」と「たわみ」をチェックしますが、違いは荷重の取り方です。
端太材への等分布荷重 w = P × 0.001 × 端太材間隔
→ 側圧を端太材間隔分だけ集めた荷重
考え方のイメージ: せき板が受けた圧力を端太材が「線」で受け止めるので、端太材間隔分の幅の圧力が1本の端太材に集中します。
スラブの場合: 端太材の代わりに「大引」、セパ間隔の代わりに「支柱間隔」で同じ計算を行います。
Step 4: セパレーター — 型枠を引っ張って止める
セパレーターは対面する型枠同士をつなぐ鋼棒です。コンクリートの圧力で型枠が外に開かないように引っ張って止める役割です。
荷重の考え方
セパ1本が負担する面積は「端太材間隔 × セパ間隔」の四角形です。
セパ1本あたり荷重 F = P × a × b
a: 端太材間隔 (m)
b: セパ間隔 (m)
P: 設計側圧 (kN/m²)
判定: F ≦ Ta(セパの許容引張荷重)
注意: セパレーターは破断すると型枠が一気に崩壊する重要部材です。安全率(Ta/F)は余裕を持たせましょう。
スラブの場合: セパレーターの代わりに「支柱(パイプサポート)」が荷重を受けます。支柱1本あたりの負担面積は「根太間隔 × 大引間隔(=支柱間隔)」です。
土木学会式とJASS5の違い
このツールでは2つの算定基準を選べます。
| 土木学会式 | JASS5(2022) |
| 対象 | 土木構造物 | 建築構造物 |
| 考え方 | 打設速度・温度で側圧を低減 | 液圧(Wc×H)で統一 |
| 入力項目 | Wc, H, R, T, 部位 | Wc, H のみ |
| 特徴 | 条件次第で側圧を小さくできる | 安全側で計算がシンプル |
JASS5が液圧に統一された理由
2022年の改定で、JASS5は打設速度や温度による低減をやめて液圧に統一しました。理由は:
- 高流動コンクリートの普及で、従来の低減式が合わないケースが増えた
- 打設速度の管理が現場ごとにバラつきがある
- 安全側に統一した方が事故防止になる
どちらを使う?: 土木工事なら土木学会式、建築工事ならJASS5が基本です。迷ったら安全側のJASS5を選べば間違いありません。
部材の選び方
せき板
| 種類 | 板厚 | 特徴 |
| コンパネ 12mm | 12mm | 最も一般的。コスト安いが強度は低め |
| コンパネ 15mm | 15mm | 12mmでNGの時に検討 |
| コンパネ 18mm | 18mm | 高い側圧に対応。重量増に注意 |
| 塗装合板 12mm | 12mm | コンパネより高強度。仕上がりも良い |
端太材・大引
| 種類 | 強み | 使い分け |
| 単管パイプ | 軽い・入手しやすい | 壁・柱で側圧が小さい時 |
| 単管ダブル | 単管の2倍の強度 | 単管シングルでNGの時 |
| 角鋼管 60〜100 | 高強度・断面効率が良い | 高い側圧・スラブの大引 |
| 杉材 | 加工しやすい | 木造型枠・小規模工事 |
セパレーター
| 径 | 許容荷重 | 用途 |
| W5/16(2.5分) | 13.7 kN | 薄い壁・低い側圧 |
| W3/8(3分) | 20.6 kN | 最も一般的 |
| W1/2(4分) | 27.4 kN | 柱・高い側圧 |
| W5/8(5分) | 51.9 kN | 大断面柱・特殊 |