型枠設計の計算根拠

なぜこの計算になるのか? 各ステップの考え方をわかりやすく解説

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目次

  1. 型枠設計の全体像
  2. Step 1: 側圧計算 — コンクリートが型枠を押す力
  3. Step 1(スラブ): 鉛直荷重 — 上から下への力
  4. Step 2: せき板 — 直接コンクリートに触れる板
  5. Step 3: 端太材 — せき板を支える骨組み
  6. Step 4: セパレーター — 型枠を引っ張って止める
  7. 土木学会式とJASS5の違い
  8. 部材の選び方

型枠設計の全体像

型枠設計とは、「まだ固まっていないコンクリートの圧力に、型枠が耐えられるか?」を確認する作業です。

コンクリートを打設すると、液体のように型枠を内側から押します。この力に対して、型枠の各部材が壊れたり、変形しすぎたりしないかを順番にチェックします。

側圧を求める
せき板
端太材
セパレーター

考え方はシンプルです。「力」を求めて、各部材が「その力に耐えられるか」を内側から外側に向かって順番に検討していきます。

ポイント: 型枠は仮設構造物なので永久に持つ必要はありません。コンクリートが固まるまでの短い間だけ耐えればOKです。そのため、許容応力度も本設構造物より大きな値を使えます。

Step 1: 側圧計算 — コンクリートが型枠を押す力

そもそも側圧とは?

打設直後のコンクリートはまだ液体に近い状態です。水を容器に入れると底ほど圧力が大きくなるのと同じで、コンクリートも下に行くほど型枠を強く押します。この横方向の力が「側圧」です。

液圧と実際の側圧の違い

もしコンクリートが完全な液体なら、側圧は単純に「単位重量 × 高さ」で求まります。

液圧 = Wc × H
例: 24.0 kN/m³ × 3.0 m = 72.0 kN/m²

しかし実際は、コンクリートは打設後すぐに固まり始めます。下の方から固まるので、液圧より小さくなることが多いです。

「どれくらい小さくなるか」は、打設速度温度に左右されます。

土木学会式

これを式にしたのが土木学会式です。

P = (Wc/3) × {1 + 100R/(T+20)} …柱、または打設速度R<2の場合
P = (Wc/3) × {1 + (150+30R)/(T+20)} …壁で打設速度R≧2の場合

Wc: 単位容積重量 (kN/m³)
R : 打設速度 (m/h)
T : コンクリート温度 (°C)

最終的な設計側圧は、この算定値・液圧・上限値の3つのうち最小値を採用します。

設計側圧 = min(算定式の値, 液圧, 上限値)
上限値: 柱 = 150 kN/m², 壁 = 100 kN/m²
なぜ最小値?: 算定式が液圧より大きくなることは物理的にありえません。また、上限値は「これ以上の側圧は実務上考えなくてよい」という安全側の上限です。

セパレーター間隔の算出

側圧がわかったら、セパレーター1本が負担する面積からセパの間隔を求めます。

正方形配置の場合: 間隔 = √(Ta / P)

Ta: セパの許容引張荷重 (kN)
P : 設計側圧 (kN/m²)

例: Ta=20.6kN, P=50kN/m² → √(20.6/50) = 0.642m → 600mm(50mm切下げ)

Step 1(スラブ): 鉛直荷重 — 上から下への力

スラブ(床版)の型枠は、柱や壁と違って横からの力(側圧)ではなく、上からの重さ(鉛直荷重)に耐える必要があります。

設計荷重 W = コンクリート自重 + 作業荷重

コンクリート自重 = Wc × t(スラブ厚)
作業荷重 = 1.5 kN/m²(作業員・機材の重さ)

例: 24.0 × 0.15 + 1.5 = 3.6 + 1.5 = 5.1 kN/m²

検討の流れは柱・壁と同じですが、部材の名前が変わります。

荷重を求める
せき板
大引
支柱

Step 2: せき板の検討 — 直接コンクリートに触れる板

せき板(コンパネ等)はコンクリートに直接触れる部材です。端太材(または根太)の間隔をスパンとする単純梁として検討します。

2つのチェック項目

チェック項目何を確認?判定基準
曲げ応力度板が折れないかσ ≦ fb(許容曲げ応力度)
たわみ板がたわみすぎないかδ ≦ L/300

計算の考え方

せき板の幅1mmあたりで考えます(単位幅法)。こうすると板の幅に関係なく計算できます。

【曲げ】
荷重 w = P × 0.001 (N/mm per mm幅)
モーメント M = wL²/8
断面係数 Z = t²/6
応力度 σ = M/Z ≦ fb

【たわみ】
断面二次モーメント I = t³/12
たわみ δ = 5wL⁴/(384EI) ≦ L/300
L/300とは?: たわみの許容値です。スパン300mmの板なら1mmまでたわんでOKという意味。これを超えるとコンクリートの仕上がり面に影響が出ます。

最大許容スパン

逆算すると「この板で何mmまでの端太材間隔が使えるか」がわかります。曲げとたわみの両方から算出し、小さい方が最大スパンになります。

Step 3: 端太材の検討 — せき板を支える骨組み

端太材はせき板の裏側で支える部材です。セパレーター間隔をスパンとする単純梁として検討します。

せき板と同じく「曲げ」と「たわみ」をチェックしますが、違いは荷重の取り方です。

端太材への等分布荷重 w = P × 0.001 × 端太材間隔

→ 側圧を端太材間隔分だけ集めた荷重

考え方のイメージ: せき板が受けた圧力を端太材が「線」で受け止めるので、端太材間隔分の幅の圧力が1本の端太材に集中します。

スラブの場合: 端太材の代わりに「大引」、セパ間隔の代わりに「支柱間隔」で同じ計算を行います。

Step 4: セパレーター — 型枠を引っ張って止める

セパレーターは対面する型枠同士をつなぐ鋼棒です。コンクリートの圧力で型枠が外に開かないように引っ張って止める役割です。

荷重の考え方

セパ1本が負担する面積は「端太材間隔 × セパ間隔」の四角形です。

セパ1本あたり荷重 F = P × a × b

a: 端太材間隔 (m)
b: セパ間隔 (m)
P: 設計側圧 (kN/m²)

判定: F ≦ Ta(セパの許容引張荷重)
注意: セパレーターは破断すると型枠が一気に崩壊する重要部材です。安全率(Ta/F)は余裕を持たせましょう。
スラブの場合: セパレーターの代わりに「支柱(パイプサポート)」が荷重を受けます。支柱1本あたりの負担面積は「根太間隔 × 大引間隔(=支柱間隔)」です。

土木学会式とJASS5の違い

このツールでは2つの算定基準を選べます。

土木学会式JASS5(2022)
対象土木構造物建築構造物
考え方打設速度・温度で側圧を低減液圧(Wc×H)で統一
入力項目Wc, H, R, T, 部位Wc, H のみ
特徴条件次第で側圧を小さくできる安全側で計算がシンプル

JASS5が液圧に統一された理由

2022年の改定で、JASS5は打設速度や温度による低減をやめて液圧に統一しました。理由は:

どちらを使う?: 土木工事なら土木学会式、建築工事ならJASS5が基本です。迷ったら安全側のJASS5を選べば間違いありません。

部材の選び方

せき板

種類板厚特徴
コンパネ 12mm12mm最も一般的。コスト安いが強度は低め
コンパネ 15mm15mm12mmでNGの時に検討
コンパネ 18mm18mm高い側圧に対応。重量増に注意
塗装合板 12mm12mmコンパネより高強度。仕上がりも良い

端太材・大引

種類強み使い分け
単管パイプ軽い・入手しやすい壁・柱で側圧が小さい時
単管ダブル単管の2倍の強度単管シングルでNGの時
角鋼管 60〜100高強度・断面効率が良い高い側圧・スラブの大引
杉材加工しやすい木造型枠・小規模工事

セパレーター

許容荷重用途
W5/16(2.5分)13.7 kN薄い壁・低い側圧
W3/8(3分)20.6 kN最も一般的
W1/2(4分)27.4 kN柱・高い側圧
W5/8(5分)51.9 kN大断面柱・特殊